知っておくべき宗教事情

世界には多くの宗教がありますが、出張した先々での「宗教事情」についてご存じでしょうか?ここでは渡航先で知っておくと有利な「宗教事情」についてQ&Aも交えながらご紹介致します。
中でも最も気になることの一つが日常生活とは切り離せない食事等生活習慣におけるマナーではないでしょうか。
宗教上の考え方の違いは時に、(日本人の感覚からすると)そんな些細なことでといった言動が、思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。食事、生活習慣における特徴的な事柄を以下にまとめました。

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目次
  1. ヒンドゥー教 の知っておきたい食事・生活習慣
  2. イスラム教 の知っておきたい食事・生活習慣
  3. ユダヤ教 の知っておきたい食事・生活習慣
  4. Q&A
  5. まとめ

1. ヒンドゥー教

主な国:インド、ネパール、スリランカ、バリ島(インドネシア)

① 飲食事情について
牛は神聖、豚は不浄な生き物として基本的に食べません。飲酒は宗教上禁じられているという人もおり、目上の人や親族の前では飲まない慣習があります。インドでは、酒屋等で購入したアルコール類は公共機関 地下鉄等へ持ち込むこともできません。
ヒンドゥー教の方については人によって嫌うものが異なるので、注意が必要です。例えば、完全に肉食を避けて卵だけ、魚だけ食べる方もいらっしゃれば、五葷(ごくん)と言われるニンニク、ニラ、ラッキ ョウ、玉ねぎ、アサツキを一切口にしない方、魚介類全般を忌避して魚からとった出汁を使う食事を避ける方もいらっしゃいます。もし手土産を持っていこうとする際は、あらかじめ注意しておきましょう。 ※インドでの飲酒可能年齢は州により異なり、例えばデリーでは25歳以上、ムンバイでは21歳以上からとなるなど注意が必要です。
また食卓で食事をする際、肘から上を食卓に載せて食べる方が多いのですが、日本では行儀が悪い姿勢だと言われているので若干の違和感を感じるかもしれません。料理は右手を、料理を取り分ける時や席を立つために椅子を引くときは使っていない左手を使います。

② 生活習慣について
左手は不浄の手とされ、握手や食事は右手で行うのが基本です。
チップやホテルのルームキー、ビジネスシーンでの書類の受け渡しなども右手を使うことが得策です。

③ 喫煙について
インドでは公共施設はすべて禁煙で違反すると200ルピーの罰金が課されます。喫煙できる場所は日本同様決められた場所と屋外に限定されており、ホテルや高級レストランなどでは一切吸うことができないと思っておいた方が良いでしょう。
※因みにインドは2019年09月~電子タバコの生産・販売・輸入を禁止しており違反者には罰金が科せられます。日本から出発する際に免税店で煙草をご購入の際は各国独自のルールもありますのでご注意ください。

2. イスラム教

主な国:インドネシア、インド、パキスタン、バングラディシュ、サウジアラビア、マレーシア、トルコなど

① 飲食事情について
イスラム教徒は「食材」、料理に付着する「血液」、調理が行われる「厨房」「調理器具」が教義に則っているかに敏感な方が多いです。例えば、イスラム教徒が口にしない豚由来の食材(豚肉、ゼラチン、ラードなど)や、アルコールを含むもの、調理用の「日本酒/ワイン」や「みりん」などが触れた調理器具で作られたものは口にしません。
日本人からは慣れない習慣として「断食(ラマダン)」が挙げられます。これはイスラム歴第9月に1か月にわたって行うというもので、この期間中は夜明けから夜になるまで、一切の飲食が禁じられます。生命維持のために毎日薬を服用している方や幼児、体調が優れない方を除いては、水でさえも口にしません。日本の暦では4月半ばから5月半ばの期間になりますが、決して一緒に断食を行う必要はなく、相手の習慣の1つとして認識しておくといいでしょう。

② 生活習慣について
左手は不浄とされ、握手や食事は右手を使うのが基本です。頭は神聖なものと考えられており、不用意に子供の頭を撫でるなども控えたほうがよいでしょう。
またイスラム教徒には1日5回、礼拝の時間があります。それぞれファジュル(夜明け)、ズフル(正午過ぎ)、アスル(午後)、マグリブ(日没後)イシャー(夜)と呼ばれますが、日本人には全く馴染みがないため、この時間への配慮にかけてしまうこともあるので知っておくといいでしょう。
※それぞれの時間は都市によって異なりますが、インターネット上に都市別で公開されています。こちらを機に是非調べてみてください。

③ 公共交通機関について
男女の接触は避けるのが望ましく、異性の隣に座るのは避けるのがベターです。イランの地下鉄ではトラブル防止のため、男女別の車両もあります。

④ その他
日本では良い意味の親指を立てる(グットサイン)ジェスチャーは相手を侮辱する行為となるため控えてください。

3. ユダヤ教

主な国:主にイスラエル、米国、フランス

①飲食事情について
食べてよい物、いけない物が厳格に区別されています。
「カシュルート」⇒食べてはいけない物
豚、血液、イカ、タコ、エビ、カニ、ウナギ、貝類、ウサギ、馬、肉、乳製品と肉料理の組合せ など
「コーシェル」⇒上記を除く、食べて良いとされる物
※機内食としてリクエストできる「コーシャーミール(ユダヤ教で適切な処理を施した食材)」も、ユダヤ教徒が食べてはいけないものが含まれる為、提供には注意が必要です。
またイスラム教と同様に、厨房や調理器具への配慮も必要です。ユダヤ教は、献立の中に乳製品と肉料理が一緒に存在すること、同じ調理器具で乳製品と肉料理を一緒に煮ること、乳製品を食べた後の数時間以内に肉料理を食べることをいずれも忌避しています。

②生活習慣について
金曜の日没から土曜の日没まで(安息日)何もしてはいけない決まりがあり、一部を除いて公共交通機関は運休になります。また一部の方は39種類の禁止事項を守られており、例えば「耕す」「蒔く」「壊す」「書く」「火をつける」などのことを一切行いません。このため定時になると照明が消えるタイマーやボタンに触れなくとも各階で自動開閉するエレベーターなどが使われていることもあるとか。もし安息日にユダヤ教の国に訪れる際は注意しましょう。

4. Q&A

①海外出張時に現地の方のご自宅や、レストラン等で美味しくご飯を食べる事があると思います。その時にも国によっては独自のルールがあったりします。知らないと現地でマナー違反扱いされてしまう事も。出張先の食後のマナーもしっかり勉強していきましょう。

Q:現地のお客様のご自宅に招待され、晩御飯をご馳走になりました。食後のマナーとしてどちらが適してますでしょうか?
1.残さずにきれいに食べきる
2.少し残しておく

②次はイスラム教の方との食事タブーについて勉強しましょう。特に戒律の厳しい宗教の方との食事に関して、誤った認識の行動が取引にも影響が出てしまいかねない状況になります。前もって知っておくことであなたの印象もよくなることでしょう。

Q.あなたはマレーシアへ海外出張中。仕事を終え、取引先の現地の方と夜に食事に行くことに。お相手の方はイスラム教。レストランの選択肢として正しいものはどれでしょう。

A.特に気にせず、近くの空いているレストランに入る
B.「Non Halal」という看板を掲げたレストランに入る
C.「Halal」という看板を掲げたレストランに入る

<正解>
①の答えは...国によってはどちらも正解になり得ます!!
私も中国に出張に行った際、お客様宅でご飯をご馳走になった事がありますが、出されたご飯を食べきってもおかわりを入れられてお腹いっぱいで苦しんだ経験があります。後から調べてみると、【中国では食べきってしまうとおかずが足りなかった】と思わせてしまう事がわかりました。しかし、2021年4月の全人代=全国人民代表大会で「反食品浪費法」が可決され、飲食店で料理を注文しすぎた客に店側が食べ残した分の処分費用を請求できるようにするほか、飲食店に対しても、客に大量に注文させた場合には最高で1万人民元、日本円で16万円余りの罰金を科すことが法律として定められました。従来の文化を知っておくことも必要なことではありますが、その文化も時代によって変化していることも頭に入れておきたいですね。また、外食の際の支払い方法も割り勘の場合や、誘った人が払うといった国ごとに文化が異なる為、海外出張前はNG行動と一緒に食事するときのマナーも勉強していきましょう。

②の答えは...Cです。
ハラル(Halal)というのは、アラビア語で「許可されたもの」を意味しイスラム教徒が口にするものはハラルでなければなりません。
イスラム教では豚肉を食べることは禁じており、牛・鶏もイスラム式に処理されたものでなければ口にすることはできません。
またアルコールの接種も禁じているため、上記ご紹介の通り、日本では日常的に使われているみりん、醤油をお土産にしようかと検討されている方は要注意です。また日本のお菓子に使われているゼラチンも豚派生品なので注意しましょう。
ハラルフードについてもっと知りたい方は、日本にもイスラム教徒の方と一緒に楽しむことができるハラルフードのお店・レストランが多数ありますので、是非ご賞味ください。

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5.まとめ

いかがでしたでしょうか。宗教だけではなく習慣の違いによるものもあり異国の地では気を付けておかねばならない事も多いですが、事前に知っておくことでコミュニケーションもスムーズにいき、関係性も円滑にという事もあるかもしれません。
“郷に入っては郷に従え”と言うように、行く先々のスタイルや価値観を知識として備えることで、商談先や現地のコミュニティへの理解も深まります。日本人は外国人から見るとマナーが良い(礼儀・接客)とされているがゆえに、それぞれの風土を理解することが早く現地の人々を理解することが、あなたの印象を変え好感を持ってもらえる第1歩となります。出張前に、一度渡航先の宗教現地事情に関する知識を持って出かけて頂ければきっと役に立つ場面がある事と思います。

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※本書の内容は、本書執筆時点(2022年11月1日)の内容に基づいています。

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