社員旅行は経費計上できる?福利厚生費にあたる3つの条件
社内イベントとして、社員旅行を実施している企業も多いでしょう。しかし、参加する従業員が多いと、費用も多額になることが予想されます。社員旅行の費用は経費として計上できるのでしょうか?
本記事では、社員旅行にかかる費用が経費として計上されるための条件や、経費計上できる費用とできない費用などについて解説します。社員旅行を検討中の経営者や経理担当者の方は、ご参考にください。
目次
そもそも「社員旅行」とは?
社員旅行とは、企業が従業員を対象に提供する福利厚生の一環として行われる旅行のことです。日々仕事に励む従業員のリフレッシュはもちろん、親睦を深めることなどを目的としています。行き先などに関して、明確な定義はありません。
ここでは、社員旅行の目的や慰安旅行や研修旅行との違いなどについて解説します。
社員旅行の目的
社員旅行の主な目的は、次の3つです。
従業員のリフレッシュ
従業員同士のコミュニケーションの活性化
業務効率向上
1つめの目的が、従業員のリフレッシュです。社員旅行は、会社のために日々働いている従業員たちの労をねぎらうために企画する企業が多いでしょう。
ストレスや身体的疲労が蓄積すると、本来のスキルを発揮できず、業務効率が低下したり成果が出なかったりする可能性があります。
そこで、会社が社員旅行を実施することで従業員は日々の業務から解放されて、リフレッシュできるでしょう。それにより、仕事で溜まったストレスを発散でき、新たな気持ちで仕事に打ち込めるようになります。
2つめの目的が、従業員同士の親睦を深め、コミュニケーションを活性化させることです。仕事の効率を上げるためには、心のケアと同時に従業員同士がコミュニケーションを取りやすい環境であることも重要な要素といえます。
大きな企業になると、所属する部署以外の従業員と面識がないというケースも少なくありません。普段コミュニケーションを取れない従業員同士が集まって、羽を伸ばしながら会話をすることで、親睦を深められます。また、社員旅行では上下関係を取り除くことで、よりコミュニケーションが取りやすくなります。
3つめの目的が、業務効率の向上を図ることです。業務効率を向上させるためには、従業員間のコミュニケーションの活性化が欠かせません。コミュニケーションが活性化されれば、結束力を高めるきっかけにもなります。
従業員同士がひとつの目標やビジョンに向かってチームワークや連帯感を強めることで、日々の業務効率が向上します。
社員旅行と慰安旅行や研修旅行との違い
社員旅行と似た言葉に、「慰安旅行」や「研修旅行」があります。ここでは、社員旅行とそれぞれの言葉の違いについて解説します。
大まかな違いは、次の表のとおりです。
種類 | 目的 | 国税庁の扱い |
---|---|---|
社員旅行 | 従業員間のコミュニケーションの活性化など | 従業員レクリエーション旅行 |
慰安旅行 | 従業員へのねぎらい | 従業員レクリエーション旅行 |
研修旅行 | 従業員のスキルアップ | 研修旅行 |
慰安旅行との違い
慰安とは、労をねぎらうことを意味します。したがって慰安旅行は、会社に貢献してくれている従業員をねぎらうための旅行です。一方の社員旅行は、従業員のリフレッシュや従業員間のコミュニケーション活性化を目的とした旅行を指します。
つまり慰安旅行は「ねぎらい」を目的とし、社員旅行は「業務に関わる目的を備えている」点が相違点です。
また、税法上はどちらも「従業員レクリエーション旅行」として扱われます。
研修旅行との違い
研修旅行とは、新入社員・中途社員などに対して職業訓練やスキルアップを目的として行われるもので、会社の先輩・上司などが泊りがけで実施します。会社が業務を行うために直接必要な旅行の場合は、その費用は給与として課税されません。
社員旅行は福利厚生費として計上できる
社員旅行に関わる費用を福利厚生費として経費計上することは、可能です。しかし、経費処理する際には、一定の条件を満たす必要があります。
そもそも福利厚生費とは、従業員の快適な職業環境を整えるために必要な経費を指します。福利厚生として挙げられるものは、健康保険や厚生年金保険の整備、交通費の補助などです。
次項では、社員旅行を福利厚生費として計上する、詳しい条件を解説します。
搭乗1時間前には空港に到着する
国内線のフライトを利用する際には、出発の1時間前には空港に到着しましょう。1時間前に到着しておくと、チェックインや手荷物の預け入れ、保安検査場の通過といった搭乗前に必要な手続きをスムーズに行うための時間を十分に確保できます。
空港の規模や利用する航空会社、さらには出発時間帯によって、手続きにかかる時間は異なる点に注意が必要です。たとえば、羽田空港のような大きな空港では、朝や夕方が特に混雑します。そのため、通常よりも早めに空港に到着する必要があるでしょう。長い列に並ぶことや、保安検査場での待ち時間が増えることを考慮すると、1時間前ではなく、さらに時間に余裕を持って行動することが必要でしょう。
なお、LCC(格安航空会社)や地方の小規模な空港を利用する場合は、チェックインの受付が出発の2時間前から開始されることもあります。
社員旅行を福利厚生費として計上できる3つの条件
社員旅行を福利厚生費として計上するうえで必要な条件は、次の3つです。
旅行期間が4泊5日以内
参加者が全従業員の半数以上
過度に贅沢ではない一般的な旅行内容
それぞれ詳しく見ていきましょう。
旅行期間が4泊5日以内
旅行の全行程が4泊5日を超えないことが、基本的な条件です。ただし、海外旅行の場合は、機内泊を含みません。現地での滞在期間が、4泊5日以内であることが求められます。
また、旅行内の一部分だけを経費計上することは認められない場合もあるため、注意しましょう。
参加者が全従業員の半数以上
社員旅行に関わる費用を福利厚生費として計上するには、旅行参加者が全従業員の50%以上であることが要件です。社員旅行に参加するのが役員のみの場合や、全従業員数の半数以下しか参加していない場合は、経費として認められないため注意しましょう。
従業員以外にもアルバイト・パートの従業員がいる場合には、これらも含んで計算されます。また、支店や工場ごとに社員旅行を行う場合は、開催単位ごとに50%以上の参加者が必要です。
過度に贅沢ではない一般的な旅行内容
旅行の内容が豪華すぎる場合、経費としての認められない恐れがあることに注意が必要です。
社員旅行の内容は、「一般的に受け入れられる範囲」であることが求められます。旅行の目的は、従業員のリフレッシュやコミュニケーションの活性化であるためです。
経費で社員旅行を落とせる背景には、少額不追求の適用があります。これは、「従業員への現物支給額が少額の場合は、強いて課税しない」という内容です。しかし、少額にあたる具体的な金額は国税庁から提示されていないため、注意しましょう。
社員旅行を福利厚生費として計上できないパターン
社員旅行を福利厚生費として計上できると紹介しましたが、上記の条件を満たしていても計上できない場合もあります。計上できないのは、次の2パターンです。
旅行不参加者に金銭を支給している
取引先が同伴している
あとになってから「計上できない」とならないように、それぞれをしっかり押さえておきましょう。
旅行不参加者に金銭を支給している
不参加者に金銭を支給した場合は、福利厚生費として認められません(ギフトカード・金券類などを含む)。社員旅行に参加した従業員と参加できなかった従業員との間に、不平等が生まれないようにするためです。
そもそも、福利厚生費は金銭以外の報酬として提供する必要があります。そのため、従業員に現金を支給すると、福利厚生費として認められません。さらに、所得税の課税対象になり、現金を受け取った従業員はもちろん、社員旅行に参加した従業員も課税対象となってしまうことに注意しましょう。
なお、不参加の従業員に諸費の代わりとなるような物品を支給(現物支給)した場合も同様に扱われるため、注意してください。
取引先が同伴している
社員旅行に取引先を同伴させると、経費にはなりません。社員旅行は、従業員のリフレッシュや従業員間のコミュニケーションの活性化を目的として行われます。社外の人間が参加すると、福利厚生の旅行には該当しないため、企業のレクリエーション旅行と認められません。
もし取引先や関係者など社外の人間を参加させる場合、経費をすべて別計算し交際費として処理する手段があります。社員旅行の経費とは別の手続きが必要になるため、計画・準備に関連する書類や領収書などは、しっかりと管理しましょう。
経費計上できる社員旅行中の費用とできない費用
経費計上できる社員旅行中の費用とできない費用について、見ていきましょう。具体的な社員旅行中の費用について解説するので、経理担当者の方はご参考にしてください。
経費計上できる社員旅行中の費用
社員旅行中の費用で経費計上できるものとしては、社員旅行における食事の費用、観光活動の費用が挙げられます。
<社員旅行における食事の経費>
社員旅行の間に生じる従業員の食事代は、福利厚生の一環として一般的に経費処理が認められます。とくに、参加者全員が一緒に食事を楽しむケースにおいては、経費として認められることが多いです。
社員旅行で宿泊する施設で食事提供がないといったような場合、食事ができる場所を探してスケジュールに入れるとよいでしょう。
<社員旅行における観光活動の経費>
社員旅行中の観光代も、一般的に福利厚生費として認められます。たとえば、専用の観光バスをチャーターしての観光ツアーや観光スポットを巡る旅など、社員旅行の楽しみ方のひとつであるこれらの活動は経費対象となることが多いです。スケジュールには、その土地ならではの観光を組み込むのをおすすめします。
経費計上できない社員旅行中の費用
社員旅行中の費用で経費計上できないものには、社員旅行の自由時間中の支出やお土産の費用などが挙げられます。
<社員旅行における自由時間中の支出>
社員旅行では、グループ行動以外に個人や少人数での自由行動の時間を設けられることもあるでしょう。しかし、自由行動時間内の食事代・観光代など個人的な支出は、基本的に経費として計上できません。
<社員旅行におけるお土産代>
社員旅行中に個人で選んで購入する土産費用は私的な出費と見なされるため、経費として認められません。
自由時間や個人で買ったものなどに関しては、経費として基本的に認められないと覚えておきましょう。また、従業員間で認識にズレがないよう、社員旅行の参加者全員にはしっかりと伝えておくことが重要です。
家族同行の社員旅行は経費計上できる?
社員旅行を実施するうえで、気になる2つの疑問について解説します。
従業員の家族が同行する場合
家族経営の会社が社員旅行を実施する場合
家族がいる場合、「社員旅行に連れて行きたい」と考える人もいるかもしれません。また、家族経営の会社を営んでいる場合の扱いはどうなるのでしょうか。それぞれの場合について、詳しく解説します。
従業員の家族が同行する場合
家族が社員旅行に同行する場合は、次の2つの条件を満たす必要があります。
家族の社員旅行参加費は従業員が全額負担する
社員旅行中は家族も全行程に参加する
社員旅行に従業員の家族を同伴させる場合は、同伴する家族にかかる費用は実費となります。従業員を対象とする福利厚生費では、原則として社外の人の参加費用を計上することはできません。
会社側は、家族の参加費用を受け取った証明を残しておくことも重要です。「振り込みにする」「領収書を発行する」など、形に残すようにしましょう。
あわせて、ほかの参加者と同様に従業員の家族も社員旅行の行程に同行する必要があります。
家族経営の会社が社員旅行を実施する場合
家族経営の場合でも、社員旅行の目的を満たせば経費として認められます。ただし、社員旅行と家族旅行を明確に区別しておくことが重要です。
社員旅行の目的は、従業員のリフレッシュなどにあります。その点、家族経営の会社では一般の企業よりも厳しく見られるため、社員旅行であることを客観的に提示できるようにすることが必要です。
そのため、家族経営の会社において社員旅行を実施する場合、社員旅行に、業務に関連する要素を含めることが推奨されます。
社員旅行を経費計上する際のポイント?
社員旅行を経費計上する際のポイントは、次の2点です。
証拠書類を保管する
社員旅行について就業規則に明記する
社員旅行にかかる費用を福利厚生費として計上するために、押さえておきたいポイントを解説します。
証拠書類を保管する
経費計上をする際に重要なのが、社員旅行が実施されたという関連する証拠書類を社内に保管しておくことです。社員旅行の費用について税務調査が行われた場合、社員旅行が実施されたことを証明するために、関連する書類を必ず保管しておきましょう。
経費計上のために保管しておきたい主な証拠書類は、以下のとおりです。
社員旅行の参加者リスト
パンフレット
社員旅行での集合写真
社員旅行のスケジュール表や日程表など
旅行中に利用した費用の領収書・請求書・明細書など
税務調査の対象期間は通常3〜5年ですが、最長で7年間のデータが求められることもあります。そのため、7年間の保存が推奨されますしておくと安心できるでしょう。
社員旅行について就業規則に明記する
社員旅行にかかった費用を福利厚生費として経費計上するためには、社員旅行の実施について就業規則に明記しておくことが重要です。定期的に福利厚生の一環として社員旅行を実施することや、全従業員が対象であることなどを、就業規則に明記しておきましょう。
また、社員旅行に付随するさまざまな費用負担についても就業規則に明記しておくと、費用負担関連のトラブルを未然に防げます。たとえば、社員旅行先が海外となった場合、パスポートが必要です。パスポートの取得費用は個人と企業のどちらの負担になるのかは、就業規則で決められます。仮にその費用を企業が負担すると就業規則で明記しておけば、その取得費用を経費として計上することが可能です。
社員旅行の勘定科目と仕訳方法
社員旅行にかかった費用は、福利厚生費の勘定科目を使って仕訳が可能です。たとえば、1人あたり3万円の1泊2日の社員旅行費(参加割合100%、従業員20人)を現金で支払った場合の仕訳方法は、次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
福利厚生費 | 600,000円 | 現金 | 600,000円 |
旅行日程の中に工場見学といった研修が組み込まれている場合は、研修に該当する費用を別途「研修費」などの勘定科目で仕訳をする必要があります。
上記の1人あたり3万円の社員旅行において、研修費が1人当たり1,500円(20人で3万円)かかったときは、次のように勘定科目ごとに仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
福利厚生費 | 570,000円 | 現金 | 600,000円 |
研修費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
まとめ
社員旅行とは、福利厚生のひとつとして企業からその従業員を対象に提供される旅行のことです。主な目的には、従業員のリフレッシュや、従業員同士のコミュニケーションの活性化が挙げられます。
主な目的には、従業員のいリフレッシュや従業員同士のコミュニケーションの活性化などが挙げられます。社員旅行は、福利厚生費として計上可能です。ただし、旅行期間が4泊5日以内、参加者が全従業員の半数以上、旅行内容が過度に贅沢ではないといった3点を満たしておく必要があります。条件を満たしていても、旅行不参加者に金銭を支給したり、取引先を同伴したりすると、経費として認められない可能性があるため、注意が必要です。
また、社員旅行を経費計上する際には、税務調査対策として証拠書類を保管しておくことや社員旅行について就業規則に明記しておくことも大切です。
社員旅行に関する精算業務については、IACEトラベルの利用がおすすめです。IACEトラベルでは、航空券やホテルなどの手配を代行しているほか、経費精算データ管理のサポート機能も提供しています。IACEトラベルで、社員旅行にかかる業務負担改善を実現してみませんか。
IACEトラベルはこちら