2026年に向けて出張規定を見直すべき理由とは?法改正と実務対応のポイント
出張規定は、一度作ったまま長期間見直されていない企業も少なくありません。
しかし、労働時間管理や経費精算、取引ルールを取り巻く環境は、この数年で大きく変わっています。
特に2026年に向けては、法改正や制度変更の動きが重なり、従来の出張規定のままでは実務とのズレが生じやすくなっています。
「今の規定で本当に問題はないのか」と感じながらも、どこから手を付けるべきか分からない担当者の方も多いのではないでしょうか?
本記事では、出張規定を見直す際に押さえておきたい基本項目と、2026年を見据えた実務上の注意点を整理します。
制度を形だけ整えるのではなく、現場で機能する出張規定を考えるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
目次
出張規定を見直す際に整理すべき基本項目
出張規定を見直す際、まず重要になるのは「何の項目を定めるべきか」を整理することです。
制度の是非や最新動向を検討する前に、土台となる項目が曖昧なままでは、見直しが形だけに終わってしまいます。
まずは、自社の規定に以下の5つの観点が網羅されているかを確認しましょう。
| 出張の定義 |
● 距離、時間、宿泊の有無による適用基準 ● 直行直帰や日帰り出張の扱い ● 国内出張と海外出張の区分 |
|---|---|
| 労働・移動時間 |
● 移動時間を労働時間に含めるかの原則 ● 移動中の業務連絡や待機時間の扱い ● 業務開始・終了時刻の区切り方 |
| 時間外・休日対応 |
● 早朝・夜間移動や商談の時間外扱い ● 事前承認ルールの明確化 ● 振替休日や代休の対象基準 |
| 旅費・日当・宿泊費 |
● 実費精算か上限額設定かの基準 ● 日当の性質(実費補助か手当か) ● 地域や時期による宿泊費相場の考慮 |
| 承認フロー |
● 事前申請の原則と緊急時の事後承認 ● 予定変更や延泊時の報告ルート ● 承認権限の範囲と判断タイミング |
これらの基本項目を整理した上で、なぜ2026年に向けて規定のアップデートが必要なのか、その具体的な背景を見ていきましょう。
2026年に出張規定を見直すべき3つの理由
多くの企業で長年据え置かれている出張規定ですが、ここ数年の環境変化により、従来の運用を放置すること自体が経営リスクとなりつつあります。
見直しが必要な背景には、大きく分けて3つの理由があります。
一つ目は、労働時間管理に対する考え方の変化です。
2026年の労基法改正を見据え、これまで暗黙的に処理されてきた移動時間や業務時間を通常勤務と同様に整理することが求められています。
二つ目は、経費精算の基準が実態と合わなくなっている点です。
物価や宿泊費の上昇、インボイス制度への対応など、外部環境の変化に合わせてルールを更新しなければ、運用が形骸化し現場に負担がかかることになります。
三つ目は、コンプライアンスと労務リスクの関係。
「取引適正化法」の施行や未払残業代リスクへの対応など、規定と実態の乖離を埋めることは、企業を守るための現実的な対応として不可欠です。
これら「労働時間管理」「経費精算」「コンプライアンス」の3つの視点から、2026年に向けた具体的な実務のポイントを詳しく見ていきましょう。
厚生労働省 | 「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書)」
【労働時間管理】2026年労基法改正が出張に与える影響
出張規定を見直すうえで、特に影響が大きいのが労働時間管理の考え方です。
近年は、出張中の働き方についても、通常の勤務と同様に整理することが求められるようになっています。
2026年を見据えた労基法改正の動きは、出張時の労働時間の扱いにも直接関係してきます。
勤務間インターバルと出張スケジュール
近年、労働時間管理の分野では「勤務間インターバル」の考え方が重視されています。 これは、終業時刻から次の始業時刻までに、一定の休息時間を確保するという考え方です。
この勤務間インターバルは、2026年に国会提出が検討されている労働基準法改正案に盛り込まれる見込みとされています。
そのため、出張時のスケジュール設計にも直接的な影響が及ぶ可能性があります。
夜遅くまで商談を行い、翌朝早くから業務を開始するような、これまで一般的だったスケジュールも見直しが必要になる場面が想定されます。
移動による負担が大きい場合、十分な休息が確保できていないと判断されるリスクがあるため、規定の中で許容範囲を整理しておくことが重要です。
連続勤務日数と長期出張
海外出張や長期案件への対応など、出張期間が長くなるケースは少なくありません。 その一方で、出張中の勤務日数について明確な考え方を定めていない企業も多く見られます。
2026年に向けて検討されている労働基準法改正案では、連続勤務日数に関する規制強化が盛り込まれる見込みとされています。
この動きにより、出張であっても連続して業務に従事する日数の管理が極めて重要になります。
「まとめて出張し、帰任後に休む」という従来の運用も、今後は見直しが必要になる可能性があります。
連続勤務をどこまで認めるのか、途中で休日を設定する場合の考え方など、勤務日数の積み上がりを前提としない設計が求められるでしょう。
みなし労働時間制と出張時の労働管理
出張中の労働時間管理について、これまで前提とされてきたのが「事業場外みなし労働時間制」です。
しかし現在、スマートフォンやクラウド勤怠管理の普及により、この前提が成り立ちにくくなってきています。
出張中であってもリアルタイムに勤怠打刻が可能であったり、業務連絡や作業履歴が詳細に残っていたりするケースが増えています。
こうした状況では、労働時間の算定が困難とは言い切れず、みなし労働時間制の適用が不適切と判断される可能性があります。
2026年に向けて検討されている労働基準法改正の流れでは、労働時間管理の厳格化がより一層重視されています。
出張だからという理由で管理を簡略化する考え方は通用しにくくなるため、規定と実態に乖離が生じていないかを確認する視点が欠かせません。
【経費精算】出張規定見直しで問われる2026年の考え方
出張規定の見直しでは、労働時間管理とあわせて、経費精算の考え方も整理が必要。
実費精算への移行やデジタル化の進展により、従来の運用が実態と合わなくなりつつあります。
出張規定として、どのような経費精算を前提とするのかが問われています。
実費精算と定額支給の考え方
出張経費の支給方法が改めて注目される背景には、2025年4月に施行された「旅費法」の改正があります。
この改正により、国家公務員の出張旅費は、これまでの定額支給から実費精算を基本とする仕組みへと大きく舵を切りました。
民間企業にとって、旅費法の改正自体に直接の強制力はありませんが、公的な基準が変化したことは無視できない要素となります。
これまでは事務負担を減らすために定額支給を選択するケースが多かったものの、透明性やコスト適正化の観点から、実費精算への移行を検討する企業が増えています。
特に宿泊費については、地域や時期による価格変動が激しく、画一的な定額支給では実態に合わなくなっている現状。
2025年の法改正という一つの指標をきっかけに、自社の旅費体系が現在の経済合理性に適っているかを再考する時期に来ています。
財務省 | 「国家公務員等の旅費制度の改正について」
インボイス制度と出張旅費の扱い
出張規定を見直す際、経理実務の観点から避けて通れないのがインボイス制度への対応です。
タクシー代、宿泊費、接待交際費などの精算において、適格請求書(インボイス)の保存を徹底するルールがすでに定着しつつあります。
ここで特に注視すべきは、2026年10月から予定されているインボイス制度の経過措置の縮小。
免税事業者からの仕入れであっても一定割合を控除できる特例がありますが、2026年10月以降はその控除割合が50%へと段階的に引き下げられます。
これにより、出張者が利用する施設やサービスが適格請求書発行事業者であるかどうかが、企業の税負担にこれまで以上に直接的な影響を及ぼします。2026年のタイミングを見据え、宿泊予約システムの選定や領収書のチェック体制を改めて規定に反映させることが、コスト管理において重要となります。
国税庁 | 「インボイス制度の概要」
物価高騰・円安と出張費基準のズレ
ここ数年は、歴史的な物価高騰や円安の影響により、出張費を取り巻くコスト環境が激変しています。
国内主要都市における宿泊費の高騰に加え、海外出張においては円安による現地滞在費の増大が顕著です。
規定上の支給基準が長期間据え置かれたままになっている場合、現場では従業員の自己負担が発生したり、宿泊先の確保に支障が出たりするなどの弊害が生じます。
これらは一時的な現象ではなく、一定期間継続する構造的な変化として捉える必要があります。
2026年に向けた見直しでは、物価スライドのような柔軟な基準設定や、上限額の現実的な再設定が焦点となります。
従業員が安心して業務に専念できる環境を整えることは、人材流出を防ぎ、業務の質を維持する観点からも不可欠な投資といえます。
【コンプライアンス】2026年における出張規定と労務リスクの関係
出張規定の見直しは、制度を整えること自体が目的ではありません。 実際には、規定と運用のズレが生じたときに、どのようなリスクが発生するのかが重要になります。
ここでは、出張規定と密接に関わる労務上のリスクについて整理します。
勤務間インターバル違反の安全配慮義務リスク
出張中の勤務間インターバルが十分に確保されていない実態は、労務上の大きな問題に発展する可能性があります。
ここで関係してくるのが、労働契約法に定められている「安全配慮義務」という考え方です。
安全配慮義務とは、使用者が労働者の生命や身体の安全を確保するよう配慮する義務を指し、出張中であっても免除されることはありません。
例えば、夜遅くまで業務を行った後に十分な休息を取らせないまま、翌朝から業務に従事させた結果として事故が発生したとすれば、企業側の責任が厳しく問われます。
運転を伴う出張や過密な移動スケジュールが常態化している場合、睡眠不足による事故リスクは安全配慮義務違反に直結します。 そういった企業の場合、早急な運用の見直しが不可欠です。
厚生労働省 | 「労働契約法のあらまし」
みなし労働時間制と未払残業代リスク
出張中の労働時間管理について、事業場外みなし労働時間制を前提としてきた企業も少なくありません。
しかし現在、スマートフォンやクラウド勤怠管理の普及により、この前提が成り立つかどうかが改めて問われています。
みなし労働時間制は、あくまで「労働時間の算定が困難であること」を前提とした制度です。
出張先からでもリアルタイムに勤怠打刻が可能であったり、業務連絡や作業履歴が詳細に残っていたりする環境下では、もはや算定困難とは言い切れません。
制度の適用が否認される可能性があります。
もしみなし労働時間制の適用が認められなかった場合、すべての業務時間が時間外労働として扱われ、未払残業代の請求につながるリスクがあります。
賃金請求権の時効延長により、過去にさかのぼって膨大な対応が必要になるケースも想定しなくてはいけません。
厚生労働省 | 「「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について」
労基署対応と是正勧告のリスク
労務管理だけでなく、2024年に成立し、2026年1月から全面的に施行される「取引適正化法(取適法)」への対応も見逃せません。
この法律は、従来の下請法では対象外だった取引にも規制を広げ、取引条件の明確化や支払方法の適正化を求めるものです。
出張に関連する業務では、タクシーやハイヤーの手配、空港送迎、出張手配会社との取引などがこの法律の対象となるケースがあります。
2026年1月からは、これらの取引について内容を明示した書面や電子データの交付がより厳格に求められるようになり、違反した場合には是正勧告等のリスクが生じます。
また、紙の約束手形の全面禁止に向けた動きも、取引適正化法における重要な変更点の一つ。
従来、出張関連業者への支払いを手形で行っていた場合、現金払いや振込への切り替えが必要になり、支払フローや経理処理にも大きな影響を及ぼします。
2026年に向けた見直しでは、こうした取引実務が現在の法令に適合しているかを総点検しておく必要があります。
政府広報オンライン | 「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」
経済産業省 | 「紙の約束手形やめませんか?」
2026年に向けた出張規定見直しのポイント
出張規定の見直しは、単に制度を新しくすることが目的ではありません。
労働時間管理や経費精算、取引ルールを取り巻く環境が変わる中で、従来の運用とのズレをどう埋めていくかが問われています。
特に2026年に向けては、労働時間管理の厳格化や税務・取引に関する制度改正が重なり、出張規定が想定していなかった場面が増えていく可能性があります。
規定が実態に合っていなければ、現場の混乱やコンプライアンス上のリスクにつながりかねません。
だからこそ、出張規定を「あるだけのルール」にせず、実際の出張業務や精算フロー、取引実務と噛み合っているかを一度立ち止まって確認することが重要です。
2026年を見据えた見直しは、そのための現実的なタイミングと言えるでしょう。
また、現地での移動中にトラブルが起きた場合、日本語でサポートを受けられない不安もあります。
そこで近年注目されているのが、航空券やホテルはもちろん、通訳やガイドの手配も含めて旅行代理店に一括で相談し、出張全体を包括的にサポートするBTM(Business
Travel Management) という考え方です。
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BTM」がその例です。企業が本来注力すべき「海外進出そのもの」に集中できる環境を整えます。
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